時代が変われば人々の生活も変わります。人々の生活が変われば、人生におけるイベントの形も変わってくるというものです。
人生のイベント。「結婚」「誕生日」「卒業式」などなど、思い当たるイベントはたくさんありますね。その中でも「この世に生まれたその日」、そして「この世からいなくなる日」は、人生最大級のイベントでしょう。以前の葬儀は形式張ったものが多かったのですが、最近は個人の好みが反映された、さまざまなスタイルの葬儀が行われるようになっています。
日本で行われる葬儀の約90%は仏式で行われています。仏式の葬儀は、僧侶が読経を行うスタイルのものです。参列者も家族・親族からビジネス関係者まで幅広く、数多くの人が集まります。最近は一般葬と呼ばれることも多いですね。
葬儀は古代の昔から、宗教と密接に関係していました。これは世界中で言えることです。日本でも仏式の他、神道式、キリスト教式など、特定の宗教式の葬儀が行われています。
しかし近年は無宗教の葬儀も多く行われています。日本人の多くは仏教徒ですが、良くも悪くも宗教に対し「無関心」なところがあります。仏教や神道の宗教観は多くの人が共有していますが、西洋の宗教や文化の良いところはどんどん取り入れるという、宗教に対しては柔軟なスタンスをとることができる人種。それが日本人です。
そういう日本人だからこそ、たとえば「お別れ会」「音楽葬」など、宗教とは関わりの無い自由なスタイルの葬儀を望む人が増えているのです。
日本では、これまでも現在も主流の葬儀スタイルです。ただ、この仏式葬儀も依然と比べると簡略化が進んでいます。
仏式の葬儀は「お通夜」「葬儀式」「告別式」が行われる、宗教的な儀礼も行われ、しきたりや慣習といったものを大切にされる方が選ぶ葬儀の形でしょう。
本来は「葬儀式」が家族、親族と親しい友人のための儀式、そして「告別式」は、ビジネス関係者や近隣住民なども集まる、より社会的な儀式という位置づけだったようですが、現在はその形に変化があるようです。
また、亡くなったその日の夜、もしくは翌日夜に行われる「お通夜」も、以前は家族や親族が、夜が明けるまでお線香とろうそくの火を絶やさず、ご遺体に寄り添っていましたが、現在では長くても3時間程度で終わる、どちらかというと友人や知人が多く参列する儀式になっています。
友人、知人は「お通夜」、もしくは「告別式」に参列することが慣例化していて、忙しい現代人にとっては、昼に行われる「告別式」よりも、夜に行われる「お通夜」の方が、都合がつきやすいということもこの変化の根底にあります。日本人のライフスタイルに合わせた、葬儀の形の変化です。
また、「仮通夜」も増えています。「仮通夜」は亡くなったその日の夜に、家族や親族だけで遺体に寄り添い、一晩明かすことを言います。仮通夜でも僧侶による読経はありますが、この読経に関しても、最近は省略されることが多くなったようです。
身内だけで行う「密葬」も増えています。「密葬」は本来、たとえば会社の重要な人物などで、その後に大規模な「社葬」などを行う場合に、ごく近い人たちのみで行われていた葬儀ですが、現在はそれとは関係なく、「密葬」だけを行うことも多くなってきたようです。
東京の僧侶派遣「一日葬」は仏式の葬儀(一般葬)の流れを簡略化したもので、すべてのプロセスを一日で行います。「一日葬」ではお通夜を行いません。「一日葬」のメリットは、葬儀日程すべてが一日で終わること、そして一般葬よりも短い日程のため、金銭的にも体力的にも負担が軽くなることでしょう。「一日葬」の場合、宗教的な儀礼は簡略化されずに行われます。参列者に高齢者が多くいる場合に、ひじょうに適したスタイルだと言えるでしょう。
家族葬は、家族と親族、そして友人という、故人と近い人たちだけが集まって行う葬儀です。家族葬のいいところは、義理や宗教の縛りを感じること無く、ゆっくりと故人を送ることができるということです。形式張ったものでは無いので、仏式的に読経をお願いすることもできます。比較的コンパクトな規模で行う葬儀のため、金銭的にもあまり負担がかからないため、近年、増加している葬儀のスタイルです。
家族葬で難しいことは、参列者を選ぶことにあります。親族や友人といっても、親しさを量ることはなかなか難しいものです。参列できなかった人や、後々亡くなったことを知り、弔問される方が出てくる可能性があります。参列者を慎重に選ぶことと、事後の対策はしっかり立てておく必要があります。密葬にも同様のことが言えるでしょう。
「直葬」は、かんたんに言えば、火葬だけを行うスタイルの葬儀です。通常は家族など、ごく少人数で行われます。少し寂しい感じもしますが、亡くなった方が高齢で、親族や知人がほとんどいないケースも多くあり、このようなスタイルの需要は多くあります。経済的な負担が少ないことから、「直葬」を選ぶ方も増えています。「直葬」の場合でも、希望があれば僧侶を呼んで読経してもらうことは可能です。
「神式」の葬儀は、神道式の葬儀です。神道は日本古来の宗教ですが、葬式の持つ意味が仏教とはまるで違います。葬儀の流れや手順も異なりますので、少し詳しくご紹介します。
神道では葬儀のことを「神葬祭」と呼びます。「神葬祭」の基本的な流れは以下のようになります。
続いて、弔辞や弔電が紹介され、その後、参列者による玉串拝礼が行われます。
閉式後、場合により、出棺祭が行われることがあります。
これまで葬儀は宗教と縁の深いものでした。しかし、日本人のライフスタイルの多様化、また、特定の宗教に偏らない考え方を持つ人が増え、これまでとは違う形の葬儀を求めている人たちが増えてきました。もちろん、現在も仏式の葬儀が主流ではありますが、個性的なスタイルで葬儀が行われるケースも増えています。
「お別れ会」「偲ぶ会」などのタイトルで行われる無宗教葬が行われることも多くなっています。
「お別れ会」の場合、家族や親族だけで、既に密葬が行われているケースがほとんどです。その後の仏式の葬儀屋告別式に当たるのが「お別れ会」となります。ある程度、知名度のある人物が亡くなった場合などに行われるケースが多く、一般の方の葬儀では、規模が大きくなりがちなこともあり、あまり行われません。
「お別れ会」には宗教的な色合いは無く、バックグラウンドミュージックが流されるなど、多くの場合、故人が好むような雰囲気作りがなされます。ホテルの宴会場やレストランなどで行われることが多く、喪服の着用もありません。平服で比較的カジュアルな雰囲気の中で行われるため、「ホテル葬」と言われることもあります。
「自由葬」は、たとえば、故人の趣味や生前に成し遂げたことをテーマに祭壇を作ったり、ビデオを流してみたり、自由なスタイルで行われる葬儀です。葬儀に決まった形式は無いので、クリエイティブな葬儀があってもまったく問題はありません。ただ、難しい部分はあります。
自由葬ではすべてのプログラムを企画する必要があります。そのため、「自由」とは言っても、意外に負担がかかるのです。ましてや故人が亡くなって間もなく行うのですから、かんたんにはいかないことを理解する必要があるでしょう。一般葬は型にはまったもので退屈だと思われがちですが、型が決まっているからこそやりやすいということも知っておくべきでしょう。
ただ、故人の希望であれば、ぜひ叶えてあげたいものです。「自由葬」をお考えなら、事前に葬儀社と相談しておくと、すばらしい葬儀にすることができるでしょう。
形式張った従来の葬儀ではなく、故人の望んだ自由なスタイルで葬儀を行いたい。そんな「自由葬」の代表格が「音楽葬」と言えるでしょう。「音楽葬」では、生演奏を故人に捧げ見送る。そんなこともできます。「音楽葬」をメニューに取り入れている葬儀社は意外に多く、たとえば一般葬と組み合わせ可能なこともあるようです。ただ、ここまで決まっていると「自由葬」とは言えないかもしれませんね。
しかし、「音楽葬」には若干高めのハードルがあります。まず、大音量の音楽を流すことを許可してくれる会場が限られます。ライブ演奏となるとなおさらです。
次に、周囲の理解を得ることが難しいことが挙げられます。いくら故人の遺志だったとしても、特に年配の親族などから反対の声が上がることはあり得るでしょう。
「音楽葬」の場合でも、一般葬で行われる「喪主あいさつ」「献花」や「焼香」などは行われることが多いようです。
「仏式葬」と「音楽葬」のハイブリッド葬儀も行われているようです。このスタイルの葬儀では、葬儀を通して、故人を思わせる、もしくは故人にゆかりのある音楽がバックグラウンドで流されることが多いようです。僧侶による読経時のみ、音楽が中断されます。
「音楽葬」を行うのであれば、参列者への配慮を忘れないようにしましょう。「音楽葬」の案内を受け取った人はこんなことを考えるようです。
一般的に好まれているのは「クラシック」のようです。「クラシック」には「レクイエム」がありますが、この「レクイエム」は、死者の安らぎを祈るために、ミサの時に使用される神聖な曲です。そういう点で、「レクイエム」は「音楽葬」にぴったりの曲であることは間違いありません。他にクラシックでは「アベマリア(シューベルト)」や「G線上のアリア(バッハ)」などが好まれているようです。最近では音楽葬向けのクラシックCDも販売されているそうです。
日本の歌謡曲では「川の流れのように(美空ひばり)」「夜霧よ今夜もありがとう(石原裕次郎)」「時の流れに身をまかせ(テレサテン)」「いとしのエリー(サザンオールスターズ)」などが人気のようです。
洋楽ポップソングでは、「イエスタデー(ビートルズ)」「サウンドオブサイレンス(サイモン&ガーファンクル)」「マイウェイ(フランク・シナトラ)」などの大ヒット曲が多く使われているようです。
自然葬という形を選ぶ型も増えています。この自然葬は、いわゆる「散骨」です。「散骨」は古くから行われている弔いの方法です。ただし、現代の日本では、どこでも「散骨」ができるわけではありません。海であれ山であれ、許可された場所にのみ「散骨」が可能です。また、散骨前に遺骨を粉末状にする必要があります。
自然葬の形には「海洋葬」「樹木葬」などの他、「宇宙葬」なども含まれます。死者を自然に戻すという考え方は、昔も今も、我々人類の中に存在しているのです。